流行に流されず、いつまでも輝きを失わない仕事を目ざして
インテリア、建築の世界にも、芸術性や斬新さを追求して脚光を浴びる人たちがいます。確かにその時代の流行をとらえ、お客様が望むデザインに反映させていくことは大切かもしれません。
しかし、建築物は芸術性のみを目的とするものではありません。そこに人の生活がある限り、長い時間を通してお客様に本当によいと感じていただけるデザインを選び、提供することがプロとして最も大切なことだと思っております。
本当に暮らしやすい空間とは
インテリア、建築はクライアントがあって初めて成立する仕事です。
特に、住宅はインテリアコーディネーターのものではなく、実際にそこに暮らすお施主様のものです。10人の方なら10人様々に、100人の方なら100人それぞれのライフスタイルがあります。独りよがりな提案ではなく、一人一人のお客様に暮らしやすい、使いやすいと思っていただけるデザインを提供したいと考えています。
建築雑誌で見かけるデザイン重視の空間は、気をつけないとデザインのためのデザインになりかねません。私が心がけているのは、人を拒絶する独りよがりの空間、写真で見ると素晴らしいものの住んでみると居心地の悪い空間をつくらない、ということです。
普通の主婦がインテリアの世界で自立するまで
美術系短大卒業後、私は放送業界に3年ほどお世話になっていました。その後、建築士の夫と知り合い結婚。二人の男の子をもうけました。
普通の主婦であった私がインテリアコーディネーターという仕事を最初に意識したのは、長男が2歳の時でした。子供と絵本を見に行った書店で偶然見つけた「インテリアコーディネーター資格試験問題集」を手に取ったときからです。一級建築士であり将来は必ず独立して設計事務所を設立すると言っていた夫と結婚して3年目でした。なぜか、子供の絵本を買わずに問題集を購入してしまったのを覚えています。
まもなく次男もでき、子育てと家事に追われてインテリアコーディネーターの資格を取得することができたのはそれから約10年後でした。
その間、独立した夫の設計事務所の手伝いをしながら、寝たきりの祖母の介護や、病床の父親の見送りを経て、子供たちの成長を待ち、やっとスクールに通うことができ、合格した時のうれしさは忘れることができません。
その後、地元の住宅会社からフェアの相談員の声がかかり、通っていたスクールから雑誌掲載の話をいただき、思いがけずテレビの仕事も経験することができました。
そして何よりも大変恵まれていたのは、スクール時代に知り合った友人と共に「住まいのインテリアコーディネーションコンテスト」に応募し、受賞することができたことだと思います。
現在はインテリアスクールの講師、住宅メーカーのコーディネート、セミナー等、資格取得前とは比べ物にならないほど仕事の範囲が広がっています。資格を取得したことにより周りから信頼を得、リフォーム等、いままでは設計事務所には依頼しにくいと思われていた仕事もいただくようになりました。
新しい取り組みも焦らず等身大の気持ちで
いつも実務の上で心がけているのは、きちんと人の話を聞くこと、分かりやすく話すこと、報告・連絡・相談を忘れないこと、そして女性の観点を生かし、きめ細かい対応を実現するよう努力しています。インテリアコーディネーターは、今までのすべての経験が生かせる仕事であり、終わりのない勉強と日々精進努力を要し、体力勝負の……仕事と実感しています。
現在、友人と共にインテリアにマッチしたアートのご提案を始めております。現代アートや陶芸作品など、名古屋市内のギャラリーとも提携し、より一層トータルなご提案を目指し、新しい取り組みに向かって次の一歩を踏み出したところです。
これからも焦らず、気張らず、自分の歩幅で一歩づつ、等身大の気持ちを忘れずに仕事を続けて行きたいと思っております。
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