プロのインテリアコーディネーターを地域別、得意分野別に紹介。インテリアコーディネートをプロに依頼したい方はもちろんプロを目指す方、既に活躍されている方が集うウェブサイトです

インテリアコーディネーター名鑑 interior coordinator directory
TOPインテリアコーディネーター名鑑とはインテリアコーディネーター掲載者一覧インテリアコーディネーターブログ一覧書籍情報リンク集
インテリアコーディネーター掲載者詳細
小川 仙月Ogawa Sengetsu
問い合わせをする
〜福祉リフォームは専門家の正しい指導のもとで〜
高齢化の進む日本社会で需要が高まる住宅改修。
個々の高齢者・身体障害者に適切な住空間を提供するため、
福祉の専門家とチームを組んでバリアフリー改修に取り組む。
商 号
小川バリアフリープラン
住 所
〒305-0027 茨城県つくば市東岡536-1
TEL
029-857-7622
FAX
029-857-7627
WEBSITE
http://ogawabfp.jimdo.com/

個々の対象者に合わせた住宅改修が必要

Q バリアフリーがご専門でいらっしゃいますね。
A ケアマネジャー、理学療法士、作業療法士といった福祉の専門家とチームを組んで相談に応じ、医学的、人間工学的な見地から、個々の高齢者・障害者の方々に必要とされる住宅のリフォームを提案しています。
Q 福祉医療の専門家をまじえて、相談ができれば心強いですね。
A そのことで信頼をいただいていますし、実際に適切な提案ができていると思っています。
Q 最近は住宅会社でもバリアフリー化が進んでいるようですが。
A 床の段差をなくしたり、手すりをつけるといった標準的な措置は住宅会社や工務店も行っていますが、個々の対応となると不十分で、現場の人々の知識も乏しいのが現状です。
Q こちらはトイレの改修ですか。
A 茨城県リハビリテーションケア学会で発表したパーキンソン病の患者さんのケースです。パーキンソン病は高齢者に多い病気で、手足の震えや立ち座り、方向転換、段差の踏み越えが困難であるなどの症状を特徴とします。こちらのご家庭では、高齢の奥様が発症され、旦那様が介護に当たられていました。奥様は昼間は伝い歩きが可能ですが、夜間は車椅子利用となり、その症状に合わせた措置が必要でした。
Q 一般的な対応では難しそうですね。
A はい。手すりなどもその方に適した商品がない場合もあります。例えば、便器の前方にとりつけた跳ね上げ式の手すりは、本来便器に接近させて取り付け、必要なとき降ろして排便中の姿勢を保つためのアームレストとなるものです。自力歩行の際はこの手すりに両手でつかまって立ち座りし、車椅子利用時は跳ね上げて邪魔にならないようにしています。
Q 臨機応変の対応が必要ということですね。

間違いだらけのバリアフリー正しい知識と親身な対応を

Q 他の業者の新築住宅やリフォーム物件を手直しされることも多いそうですね。
A 建築の専門家もバリアフリーの知識は乏しく、施主の要望に対応できなかったり、誤った対応をしてしまうことが非常に多いのです。例えば下の「オフセット手すり」の例は、近所の大工さんが手すりの用途を知らず、取り付け方を誤ってしまったケースです。
Q 他にどのような?
A ありがちなのが、「お施主様の言う通りに施工してしまう」というケースです。
Q 希望通りでは不都合が生じますか?
A 先日直面したのは、歩行困難な高齢者の住まわれるご家庭で、部屋間の高さ28pという段差が危険なことから、工務店に依頼したところ、施主様の希望のままに長さが1m20pというスペースに、スロープをつけてしまったというものです。高齢者や障害者には恐怖を感じる急勾配のスロープになってしまいました。本来は踏み台と手すりで解決できた問題でした。
Q 大手住宅メーカーも十分な対応ができないとか。
A 住宅メーカーは標準的なバリアフリー仕様を超えた個々のケースへの対応を敬遠する傾向にあるようです。右上のアプローチの手すりのケースも、施主が安全性の高い手すりへの交換を希望したところ、オプション工事になるので非常に高価になってしまうとやんわり断られたそうです。大手企業は結局のところ効率を追求するので、個々の対応はおろそかになりがちなのだと思います。

バリアフリー計画も緊急時の安全性を念頭に

Q 最近注目されていることがあるそうですね。
A アンサー東日本大震災以降、住まいの安全性について深く考えるようになりました。震災のとき、自宅の火災で逃げ遅れた高齢者や、消防隊が搬出に苦労したお宅のケースなどを見るにつけ、バリアフリーも「緊急時の脱出・救出」を念頭において計画しなければならないのではと考え、改修で外出動線に手を加えるときには意識するようにしています。
Q 高齢者宅の問題点にも気づかれているとか。
A 高齢者宅を訪れる機会が多いので気になるのですが、ものがあふれて片づけきれないお宅が多いということです。リフォームを依頼されても、せっかく設置した装備がムダになり、なにより災害時の脱出、救出の障害になりかねないのです。こうしたことも含めた総合的な計画が必要とされていると感じます。
◆私の履歴書
  株式会社ロフトで新店舗の設計、インテリア商品の開発などを手がけていました。そこで「福祉住環境コーディネーター」という資格に出会い、高齢者・身体障害者のための住宅改修に強い意義を感じて、ライフワークとする決意をしました。 退職後地元のリフォーム企業に転職して、介護リフォームの専門部署で実践ノウハウを積み、2006年に個人事務所を立ち上げました。 私の仕事は基本的には、福祉の専門家とチームを組み、ケアマネジャーの立案するケアプランなどに則って、リフォームのプランニングを行うというものです。福祉リフォームの需要は非常に多く、年間200件以上を請け負っています。
◆私の信条──「過剰なリフォーム」を抑えることも
  リフォーム件数は多いですが、個々の仕事は手すりを一本取り付ける、踏み台やステップを設置するといった小規模なものが主です。一本の手すりを適切に取り付けるだけで、日々の暮らしが格段と豊かになるケースがほとんどで、ムダな出費を抑えてほしいのです。 ですから、施主様が全面バリアフリー化を希望されているのに、「部分改修にしましょう」と提案することもしばしば。利益優先のリフォーム業者なら喜んで飛びつくところでしょうが、お客様の「手すりやスロープをここにつけてほしい」という要望ではなく、「何の動作に困っているのか」を聞くことで、必要十分な正しい対処を見つけることができるのです。
◆マイ・トレンド──畑村洋太郎氏の『失敗学』に学ぶ
  現在私が仕事を進めるうえでよりどころにしているのが、福島原発事故調査委員会で委員長を務めた工学博士の畑村洋太郎氏が提唱する『失敗学』です。これは失敗の原因をより根本から見つめなおすことで、最善の対策を見いだすという考え方です。 例えば、2004年に六本木ヒルズで回転ドアへの幼児の挟まれによる死亡事故がありました。この事故では直接の原因が「センサーの感知範囲の不備」に求められましたが、より深く原因を追及すると、回転ドアの重量の問題に行き着くというのです。 回転ドアはヨーロッパで普及していますが、当地ではこのドアは人がはさまれる可能性が高いという認識があるため、軽量に作られており、それがメーカーや職人の間で共通の認識とされていたのです。 しかしその技術を日本に輸入する際、肝心の部分が抜け落ち、高層ビルのビル風にあおられないという機能的な要請や、重厚なデザイン性が優先され、非常に重い回転ドアが作られてしまったというのです。 バリアフリー計画においても、表面的な改修にとどまっているため、かえって使いにくくなってしまっているケースが多く見られます。そうした「失敗」に学んで、より個々の対象者の本質にねざしたバリアフリー計画が提案できればと考えています。
問い合わせをする
(画像をクリックすると拡大表示されます。)
パーキンソン病患者宅のトイレ改修
高齢の奥様がパーキンソン病を発症。ご主人が介護に当たっている。従来のトイレの使い勝手が悪く、ご主人が自身で手すりを設置するなどしたが不十分で、改修を希望された。パーキンソン病は1日の間でも症状の変動があり、昼間は自力歩行、夜間は車椅子で利用できるトイレの改修が必要であった。出入口は段差をなくしたうえに、車椅子で出入りできる広さをとり、アコーディオンドアを使用することでさらに有効な間口を広げた。自力歩行の際の手すりも適切な位置に設け、両手でつかまって立ち座りするための手すりは、跳ね上げ式として車椅子利用時の邪魔にならないようにした。
改修前
出入口が狭く車椅子の出入りは不可能。ご主人がDIYで手すりを取り付けていたが、使い勝手は悪かった。
車椅子利用
夜間は車椅子を利用。間口を大きくとり、アコーディオンドアを使うことで、車椅子が30度の角度で入れる開口を確保した。
立ち座りの補助手すり
両手でつかまって立ち座りするための跳ね上げ式の手すり。車椅子利用時は邪魔にならないように跳ね上げておく。製品の本来の用途は、便座での姿勢を保つためのもの。このケースに適した製品がなかったので、別用途の既製品を代用した。
昇降式便座
立ち座りの動作を補助する昇降式便座を設置。
アプローチ階段の手すり
新築住宅の洒落たデザインの手すりも、最下段の2段分を省いてしまったために右半身片麻痺のある患者が階段を下りきれず、新しい住宅に入ったものの外出できないという状況に。住宅会社に変更を希望したが、「追加工事で高額になるから」と断られた。手すりの形状や高さも不適切だったので、左のような専用の手すりに交換した。
玄関のバリアフリー
玄関では上がりがまちを降りながら靴をはくという二つの動作を同時に行う必要があり、高齢者の転倒事故が発生しやすい。これは一度別の場所で転倒、骨折を経験された高齢者宅の玄関の改修例。上がりがまちの部分に式台(踏み台)、壁に手すりを設けたシンプルなリフォームだが、ドアの横に何気なく置かれた椅子が決め手。椅子に腰かけて靴を脱ぎはきすることで転倒を防げる。
オフセット手すりの誤った施工例
オフセット手すりの取り付けを近所の工務店に依頼したところ、逆向きに付けてしまった。使いようがないので時計をぶらさげていた。左2つが正しい取り付け方(別宅)。
動作分析が手すりの位置・形状を決める
比較的元気な要支援の方のケース。利用者の慣れた動作を活かせるように、入浴動作の聞きとり、分析を行い、手すりの位置・形状を決めた。
外出用のステップ
外出は玄関からとは限らない。上は縁側から出入りするための簡易ステップ。一段の高さは理学療法士や作業療法士が、対象者の体格や身体機能を調査し、分析、計算した結果、割り出したもの。
車椅子利用者の外出
スロープと昇降機により、車椅子利用者の外出を容易にしたもの。L字型の動線に対応している。
水回り用車いす
自力で歩行できなくなったが、ポータブルトイレやおむつには抵抗があるという人のための車いす。介助者の手助けで入浴、トイレの使用が可能。
高齢者宅の危険な現状
もらいものを処分しきれずに廊下に積み上げられた箱類、主婦が入院してしまったためにちらかり放題の室内など、高齢者宅はバリアフリーの障害のみならず、緊急時の救出や脱出をさまたげる障害物であふれている。